道具と装飾

2022年のNHK大河ドラマは鎌倉が舞台となるのをご存知でしょうか?タイトルは『鎌倉殿の13人』、小栗旬さん演じる〈北条義時〉の物語になることが決まっています。私の地元である鎌倉が題材ということもあり、どんな作品になるのかと今から期待に胸が膨らみます。

北条義時という人物はあまり印象に残っていないのですが、兄弟である北条政子は“尼将軍”という呼び名も相まってすぐに思い出されます。その北条政子にまつわる鋏(はさみ)を少しだけご紹介しつつ、道具に施される装飾についてお伝えできればと思います。

 
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出典:関市ホームページ

日本に現存する握り鋏では、北条政子が所有していた鋏が最古のものとされています。握り鋏は“和鋏”とも呼ばれ、全体の形がU字になっているのが特徴です。

刃にあしらわれた菊の紋様が美しく、高貴な印象を残しながら武士的な無骨さも感じるのは武家の時代が背景にあるからでしょうか。後白河法皇から将軍 源頼朝に与えられたものが、のちに北条政子に譲られたそうです。用途としては主に髪を切るために使われていたと考えられています。

ちなみにこの鋏が収められていたのは、国宝《籬菊蒔絵硯箱(まがききくらでんえまきすずりばこ)》。何やら仰々しい名前ですが、要は筆箱や化粧道具入れとして使われていた箱で、様々な道具が一緒に収められていました。皇族からの恩賜ということで、どの道具にも菊の紋様があしらわれています。


日常で使う道具の外観に関しては、シンプルで限りなく装飾は無い方が良いと私は考えています。そのためアマナイではプレーンな商品を多く取り揃えています。

しかし、装飾や意匠が嫌いというわけではありません。装飾がないものほど似通ってしまいますし、作り手の痕跡がなければ無機質でツマラナイものになってしまうでしょう。無機質にも潔さや美しさがありますが、どこか人間らしさや自然の風合いが残っている方が、私は趣を感じます。

装飾は道具の機能に影響のないものが大半ですが、一方で、装飾を通して職人の技に触れる、あるいは技術の継承に繋がるという考え方もできます。職人技に敬意を払い、たとえ装飾であったとしても美しいものは美しいと感じる心は大事にしていきたいと思います。

作り手の個性や痕跡を残す一方で、限りなくシンプルな日用品をアマナイではご紹介していきます。