伝統の製法で造り出される美しい手打ち鋏。全ての工程が手作業で行われる鹿児島県の伝統工芸品です。
1543年、鉄砲伝来とともに種子島に伝わった唐鋏が種子鋏のルーツとされています。良質の砂鉄や針葉樹林に恵まれた種子島は、古来から「たたら製鉄」や「鍛冶」の文化が根付いていた土地でもありました。多くの鍛冶職人が技術を競い合い、刀や鉄砲製造の傍ら鋏を造っていたといいます。廃刀令後は鋏製造を本業として、やがて島の伝統産業となっていきました。
最大の特徴は「つけ鋼/鍛接」と呼ばれる製法で造られる刃。鋏の土台となる地鉄に、刃となる鋼を高温で熱し叩いて圧着させます。2種類の鋼を打ち鍛えることにより、硬さと粘り強さを併せ持つ刃となるのです。
刃には微妙なひねりがつけられ、互いの刃が1点で交わるように調整されています。ショキショキと刃が擦り合う振動が手に伝わり、心地よく切ることができます。
つけ鋼は刀鍛冶の流れを汲む技術で、職人の腕と経験が必要とされています。鋏を1本1本つけ鋼で手造りしているのは梅木本種子鋏製作所だけです。
柄の部分は油を使った焼き付けで黒く着色されています。鉄砲鍛冶で使われていた着色方法で、鉄の質感が残る品格のある色合いです。柄の先端にはミナジリと呼ばれる小さな丸い細工が施され、硬い刃物の中にあって柔らかさを感じる可愛らしい意匠となっています。
「人生を切り開いていく」という意味を重ねて、お祝いや贈り物としても喜ばれる品です。
使い方
紙・生地・園芸など普段使いの道具としてお使いいただけます。用途や手の大きさに合わせてサイズをお選びください。
使用後は水気や汚れをよく拭き取ってください。日頃のお手入れは乾拭きが手軽でおすすめです。段々と黒錆が出て味わい深くなります。鋏全体を黒錆で覆うことで、赤錆を防ぐ効果もあります。
油を塗る場合は厚塗りをしないようご注意ください。錆を完全に防ぐことは難しく、油が固まってしまう恐れがあります。ごく少量を塗布して軽く吹き上げる程度が望ましいです。
開きにくくなった場合は、支点の擦れ合う部分に油を差して馴染ませてください。
研ぎ直しや修理も承りますのでご相談ください。
寸法 全体 240 × 74mm 刃渡り 100mm
素材 鋼
国 日本
梅木本種子鋏製作所
37代にわたり伝承された鍛冶技術を受け継いだ職人・梅木昌二氏の工房。唯一、伝統的なつけ鋼の製法で鋏を手造りしている。